じとり について知っていることをぜひ教えてください

ふじとり

telephone : 0143-44-4970  室蘭市輪西町1丁目36番6号

営業時間 : 18:00~22:00

定休日  : 火曜日

       


JR輪西駅の近く、室蘭と東室蘭を結ぶ路に直角の広い中央分離帯大通に面したところに「ラーメン、やきとり」の看板。まあ、直感的にここは旨いんじゃないかって思う感じで近寄ると、看板がすごい。まず、お母さんの表情とカラフルでタイトなノースリーブのワンピース。そして、なんとも言えない髪型と表情に目を奪われながら。何で母子なのか、なんで「お母さん ここだよ ラーメンの おいしいのは」と男の子がお母さんを導くのか、なんとも顔がほころぶ。で、店を挟んでもう一枚「お母さん ラーメンのうまいのは ここですよ‥」っとなってて「ここですよ」がツボにハマる。ほかにのも「栄養本線スタミナ駅」とか。

 

60年ぐらいやってますよ

「昭和34年かそこらからかしら。親の代から60年ぐらいやってますよ」と何とも品のある女性がカウンターのなかで焼き鳥の面倒を見ている。奥にお姉さんがいて彼女が二代目なんだそう。 当時の新日鐵の三交代で働く人たちの為に、昼の3時位から仕事の明けた人が来るのを受け入れてきたという。今は夕方4時頃から、お客さんのいなくなるまでらしい。「帰れっていわれたことない」と地元の人が言ってた。後で訊いたら閉店は22時だ。休みは火曜。

 

肉屋の冷蔵庫

店に入ると奥の壁がいい。壁じゃなくて冷蔵庫。創業当時作り付けで壁一面を冷蔵庫にした。贅沢なつくりだ。当時の肉屋なんかにこの作りを観たことがある。立派な冷蔵庫は「うまい肉が食えるよ」という象徴だったのかもしれない。肉屋達はスーパーマーケットの中に入ったり、改装するなかで消えてった風情だ。訊けば「平成4年まで現役だったのよ」という。

僕らが入って行くと、常連達もお店のひともお愛想するわけじゃないけど、席を空けて自然に仲間に入れてくれる。こっちを見ないけど、明らかに僕らにも分かるように、店の人に悪態をついたり、笑いをとる父さん。自分や家族の失敗をゲラゲラ笑いながら話すねえさん。たまらずに僕らが大笑いしているうちに、こっちを向いて話しかけてくれる。人見知りしながら気さくな人たち。

 

うちは塩からはじめたんだけどねえ

「そうだねえ、うちは塩からはじめたんだけどねえ」

ラーメン、どの味がいいかなあと訊いてみると塩、醤油、味噌とどうも店の定番になった順番で言ってくれたようだ。それで、塩と頼む。実は常連の父さんも塩ラーメンを食べ終わったところだったのを観て、真似しようかなとも思ってた。
そりゃ旨かった。小麦の味の強い麺と旨味を強調する強めの塩味。多くも少なくもない脂。昔自分の家にもあった小さなラーメンどんぶり。

旨いか旨くないかって聴かれたら旨い。室蘭にきたらまたきっと行く。ラーメン食べに。でも、父さん達にも会いたい。二回目からはきっと仲間扱いに違いない。

 

ラーメンだけ食ってないで、焼き鳥食えって

撮影:小瀬木 祐二「ラーメンだけ食ってないで、焼き鳥食えって。旨いから。普通タレって醤油だべ、味噌なんだよ、そう。味噌。味噌でタレつくってんだ。旨いから。ここ来たら、一本でもいいから。この間は自転車で回ってるの、学生だから奢ってやったけど、旨いって言ってたぞ。おれ、別に宣伝料貰ってないけどよ」。

散々飲み食いして、最後、やっと思いでラーメン一杯食べている僕らに追い打ち。それが、味噌ダレの肉、柔らかく、焼き鳥というよりはコンフィ。勿論豚肉。連れも「やられた」「この店いい」とゲラゲラわらいながら、腹をなでながら店をでる。終止笑顔。上がったまんまのホッペタの筋肉が痛い。

 

「企業城下町」という言葉があって、僕ら他所もんは、室蘭全体がそうだと思っていたのだけど、室蘭の人たちは、輪西のことを「新日鐵の城下町」と呼んでいた。今は廃校になった巨大な中学校、会社の用意する室蘭一大きな体育館、野球場、徒歩圏内に会社、学校、買い物、飯屋、全て揃う暮らし易い街。一時期の繁栄はないと言うものの「ここで残っている店は、みんなそれなりに旨いんだよねえ」とか「地力があるっていうか、賢い人たちが、店も街も守っているん だよねえ」とか。卑下というか遠慮というか、あまり室蘭のことを良く言ってくれない室蘭市民もなんとなく素直に褒める街。

 

(2014.9.5 杉山幹夫)


 

初めて室蘭で宿泊した際にお邪魔しました。この記事を読んで是非行きたいと思っていたのです。

やきとりで輪西ワインをくいくいやってるとあっという間に酔いが回って、後から来た常連さんたちと一緒に大盛り上がり。ご主人も途中何度かツボに入って、少し静かに笑う。

途中、やきとりを持ち帰りで何十本も買っていくお客さんがいた。家で友人と酒盛りをするのだと。贅沢な宅飲みだなぁ。「ここに連れてこればいっしょ!20人は入るんだから」と常連さん。「立ち飲み屋だ、立ち飲み屋!」とまた店中ケラケラ笑う。

また来るんだろうなぁ。

追記(2015.6.15小瀬木 祐二

 


 

撮影:森崎 千雅

 

 

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