この店は、通い出すと、黙っていろんなものが出てくる。

白石蓮根(しろいしれんこん)というブランドがあるそうで、食べ物で地名を覚えるのは楽しい。佐賀平野だと思っていたら、西の端、長崎県に近い元々の沼地の多いところ白石平野というのだそうだ。
白石町のホームページで品質日本一と歌われる蓮根。確かにうまい。

そういえば、福岡から特急みどりに乗って武雄の手前で蓮根の田んぼを沢山観た。

大将の話だと、新鮮で状態のいい蓮根じゃないと塩焼きはできないそうだ。それも焼き上がりは必ず食べて確認するという。11月。冬の旬の只中、増えた澱粉には火が通っていて、白いまま、歯ごたえのいい、香りのいい焼き上がり。例によって、酒に合う海塩の加減。

「食うの早いねー」と笑われる。

「いや、冷めるのがもったいなくって」。

「冷めてもうまいんだよ」と帰りに土産で持たされて、ちょっと胸に来た。

 

メニューにはない。喜びそうな常連が来たとき、それも焼きに集中できるとき、蓮根の状態が良いとき。すべての条件が揃ったときさっと作って食べさせる。「注文してくれてもできないときはできないんですよ」と笑う。

春先の孟宗を思い出すような、ヤングコーンのような香ばしさ。これは忘れられない味になった。佐々で、隣の佐賀の名物を味わう。