寺坂社長(右)と櫻井さん(左)

寺坂農園を訪ねて

 

「メロン作りって本当に面白いんですよ。例えるならこんな感じで」と、おもむろに石段の上に一本足で立ち、バランスをとる櫻井さん。メロンはほんの少しの環境変

完成した暗渠排水

化で状態が大きく変わる果物だ。

 

農業辞めたくなかったんすよ」の記事で紹介されていた寺坂農園の櫻井芳仁さんに2013年夏に訪ねることができた。

メロンを作ることが好き過ぎて、潮を被ってしまった宮城県名取市の畑から離れ、北海道の富良野でとても魅力的なことに取り組んでいるかっこいい農家なのだと。富良野に来ることがあれば、是非会ってみたいなぁと思っていた。記事の感じから、初対面で会ってもきっといい話ができそうだし、畑をまわりながらメロンについて話を聞けたら面白そうだと勝手に思い込むこととし、電話をかけた。

 

寺坂農園は北海道上富良野町のすばらしい景色に囲まれた田園地帯にある。HPには「周辺の畑に溶け込んでいるので迷ったら電話をしてください」とあるほど、のどかな場所だ。

寺坂農園に着くと、まず寺坂社長の奥様に会うことができた。櫻井さんのことを聞くと、「あの記事を読んで来てくれるなんて嬉しいねぇ。すぐに呼んできますね。」と走っていった。しばらくすると、下は農作業義、上はTシャツ一枚、よく日に焼けた男性が原付バイクに乗って少し離れた畑から駆け付けてきてくれた。一緒に畑をみながら話をしたいというと、少し不思議な反応で、おそらくあまりそういう客はいないのだろう。「そんなにお話することもありませんけど、土の話とか好きですか」と櫻井さん。好きだと返すと、寺坂夫人が「そんなこと言っちゃうと、メロンの話で止まらなくなっちゃうわよ~」と忠告をしてくださった。しかしこれは狙い通りの展開だ。

石段でバランスをとった例え話を補足するように、一緒に歩きながらメロンの話をしてくれた。メロンはほんの1日収穫が遅れるだけで糖度が大きく下がってしまう。実を一番おいしい状態で収穫するために葉と実の間で絶妙なバランスをとりながら育てるのだという。宮城県と北海道の気候や土、栽培方法の違いやメロンの生態について、嬉しそうに語ってくれた。専門的な内容をわかりやすく説明してくれたので、なんだかメロンに少しだけ詳しくなった気がする。畑を回っている途中、以前は作りかけだった暗渠排水も案内してくれた。その後、見事に完成し、現在ではチロチロと水が流れており、その機能を果たしていたのは事業の進展を感じた。

 

 

寺坂農園のメロン。皮が薄く、どこを食べても果汁が溢れてくる一通り畑を回って戻ってくると、奥様がよく冷えたメロンをふるまってくれた。食べているロケーションも相まって、美味しいと話していると。栽培した当の本人は「いやぁ自分、メロン作るのは大好きですけど、食うことはそれ程でもないんですよ」と笑いながら話す。隣にいたお客さんも一緒にメロンを食べながら笑っていた。

 

 

北海道では2期作ができないため、少しでも品質のよいメロンを作り、単価を高い水準にしなければならない。

メロンを収穫したすぐ次の日から翌年の畑の準備はもう始まっているのだ。寺坂農園ではアスパラガスやたまねぎなどの野菜の栽培や販売も行っているため人出が要る。現在では約25名が働いているという。地元の人はもちろん、サラリーマンをやめた人や、日本一周をしている途中で旅の資金を稼ぐために短期間働いている人など様々な働き手が集まり、富良野の産業として成り立っている。そんな中、櫻井さんはメロン栽培の管理責任者となり、スタッフ育成までを担っている。農園の社長である寺坂さんは「櫻井くん、すごいメロン作るんだよぉ」と全幅の信頼を寄せていた。どうもその日から家族でキャンプに行くらしく、「ごめんねー、また来て」と颯爽と走っていった。

寺坂農園

 

お盆はちょうどメロンの収穫時期にあたる。

夏休みの富良野観光の際、休憩がてらメロンを食べるために訪問するのもいいかもしれない。きっと素敵なチームに会えるだろう。

                 

寺坂農園

http://furano-melon.jp/index.html

(取材日 2013年8月15日 小瀬木 祐二)

 

 

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