「可愛いでしょ。私、自分で考えたの。椿の手鞠寿司」という女将さんが可愛い。
大島出身のご主人のもとに嫁いでから、二人で始めた民宿交楽荘は、もう40年以上。今はお嬢さんもお手伝いしている。元町港の至近で、観光協会で訊いたら「すぐそこですよ」と地図で案内された。本当に近い。
隣にスナックとかあって、ヤバい。キット飲みに行ってしまう。寝られない。笑。

椿の手鞠寿司を一口で食べて「女将さん、旨いねこれ!」というと、女将が笑い、同席のお客さん達もニコニコしている。



無計画に大島に渡って、観光協会に「宿ある?」って酷い客だなとも思いながら、協会の方が僕等の年齢や好みを推測して女将さんに交渉してくれた。もう午後だったから、晩ご飯の支度ができるかどうかがポイントだったようだ。結局女将さんが「なんとかします。ご案内ください」と言ってくれたようだ。

元町の街区のなかに普通のお家のように建っている。交楽荘の看板を見て引き戸をあけると、本来は休憩時間の女将がでてきて、お茶を入れてくれた。「ここはお茶、自分で勝手にいれて飲んでいいのよ」。
洋風のダイニングに設えた椅子席の囲炉裏。銅底は特注。真っ白な灰が美しく、カチカチの炭がゆっくり燃えていて、じわっと暖かい。大島にしては寒い二月の頭だ。密な炭を見て「備長炭?」と訊くと「いいええん。椿の炭よ。大島の」と。
「だから、灰が白いの。真っ白でしょ」。
「本当だ、すごい奇麗な灰ですね」。
銅板の緑青と白が混ざって美しい。椅子なのが楽でいい。輻射だろうか脚も暖かい。



「五時半とか、六時とかには帰ってきてね。ご飯支度しておいて、みんなで食べてもらうから」。
早めに五時頃到着した僕らに「今日はね、村民の日だから、浜の湯も、御神火温泉も只なんですって。ご飯食べてからだと遅いから、今入りにいっちゃいなさいよ。タオルある?じゃ、そのまま上がらないで。私が今、車で送って上げるから。でね、私はご飯支度があるからね、お風呂上がったら近いから歩いて帰ってきて。ね、少しでも早く行ってゆっくり入ったほうがいいから、行きは私が送るから」と僕らに何もしゃべらせない。嬉しいもてなしだ。


この日は、男二人連れの僕らの他に、大島に単身赴任のご主人を尋ねてきたあったかい家族。お母さんと小学生のお嬢さんの二人旅。そして、奥さんに一人旅を進められてやってきたいい笑顔の若い研究者。囲炉裏を囲んでいるので、お互いのグラスにビールをついだり、子どもに繋がれて会話が起こったり、それぞれのきっかけがあれば、あっという間に笑顔満載の大家族のような食卓になってしまう。この空気、女将さんの力。客同士の交流に割って入ることもなく、自然に置いといてくれる。

「今日はオアカが入ったからね、お花みたいに盛ったのよ。赤い尾っぽの魚なの」食べて見ると、鯖のような油の旨味。鯵のような強い旨味。なかなかの時魚だ。

 

 

近所の脚を骨折したネコを治療したり、そしたら居着いちゃったって。そんなことをしているので、ネコが何匹かで入りしている。




朝になったら、さらに泊まり客同士が打ち解けあっていて、本当にずっとここで一緒に下宿しているような空気だ。
「ここの朝ご飯、おいしいのよー」と先輩客に促されてテーブルに着く。
泊まり仲間は偶然というか必然というか、三原山の火口や港で会うたびに満面の笑顔で挨拶することになる。

TEL:04992-2-3231
http://www.kourakusou-web.jp

 

交通


元町港より徒歩2分